インバウンドという目的を放棄した誘致計画に意義はあるのか?

大阪IRカジノ誘致計画の賛否をめぐって、大阪全体が二分化されている。

もともと、大阪IRは外国人観光客の誘客、インバウンドなどの目的が前面に押し出されていたが、実際は「カジノ」を日本国内に作るための、カジノ中心の計画であったことは否めない。

これは、「カジノ中心の計画になっていった」というより、「カジノ中心の計画であることを隠さなくなった」という理解が正しいだろう。

大阪IR計画を市民に納得させるために、予測されるカジノ利用者をはじめは「590万人」と記載していたのを、ある程度の実現可能性が見えると、あけすけに「1610万人」に変えたことからもくみ取れる。

さらに、カジノのメインの顧客が外国人観光客ではなく日本人であったことがうかがえる「売上想定」の変更からも、すでに「外国人観光客の誘客」や「インバウンド」といった建前でしかなかった目的が放棄されていることは明らかだ。

大阪IRカジノ誘致計画が達成され、大阪にカジノができた場合、巨大な海外資本が日本人から搾取する構造ができあがり、大阪の経済は破綻し、ひいては日本全体の経済にも影響するだろう。

非現実的な大阪IRのカジノ収益の計算

大阪IRカジノの収益の計算は、予測される来客者数からして非現実的である。

大阪IRはシンガポールのカジノをモデルにしているが、おそらく、シンガポールのカジノより来客数がのぞめないにも関わらず、収益の目算をシンガポールの何倍にもしており、地に足がついていない。

大阪IRが想定している4200億円の収益に到達するためには、毎日4万人以上の人間がカジノを訪れなければならないが、そもそも構想されている施設の規模では11000人で満員になってしまう。

ターゲットが日本人に変わった状態で、11000人もの日本人が、毎日のごとく大阪のカジノ施設に足を運び、つねに満員状態を保つことを365日持続させることは、とても可能であるとは思えない。

こういった机上の空論としかいいようがないカジノ計画に、大阪市民からの反対の声があがるのは当然のことで、多額の税金を投入してまで強行する必要性はまったく感じられない。

大ゴケすることがあらかじめ約束されているような大阪IRの計画と、それによって完成されるカジノは、世界的に見てカジノのブランディングにも傷がつくようなお粗末な計画ではないだろうか。

もちろん、日本人を経済的に支配するための糸口がつかめる海外企業からすれば、カジノのよしあしなどはどうでもいいことなのかもしれないが。

グレーゾーンにあるオンラインカジノの危機

現在は合法と非合法のグレーゾーンであるとはいえオンラインカジノで遊ぶことができる。

最近はオンラインカジノの入金不要ボーナス等入り口の敷居が低くなっている事もあり、利用者数が急増している。

大阪IRの計画は、オンラインカジノの存在によっても、その必要性が疑問視されていた。
とりわけ、コロナ渦の影響もあって市場の拡大を続けているオンラインカジノは、当初以上の疑問視を大阪IRに投げかけている。

大阪IRの問題には「カジノの認可」も含まれており、大阪IRの問題を通して「オンラインカジノの合法化」についてもさかんな議論がかわされるようになった。

私見では、大阪IRの実現が近づくほどに、オンラインカジノの注目度もあがっていることは否めない。

「オンラインカジノの合法化を拒否してからでないと、リアルカジノの認可の議論をはじめてはならない」という意見もある以上、大阪IRの完成が、オンラインカジノの完全なる非合法化につながり、日本でオンラインカジノが遊べなくなる可能性もある。

大阪IRは果たして、本当に必要なのかどうか。